No.25 和歌山県立医科大学:平成26年保健看護学部前期日程模範解答

問1.著者は、なぜ手作りの丸太船で航海に出たのかを400字以内で述べなさい。

 著者は、「黒潮カヌープロジェクト」という計画の下で、手作りの船で航海をするのみならず、船を造る鉄器を砂鉄から作っていた。その中で、著者はいまも木造船を造っているマンダールの人々の力を借りて、古代の丸木船を再現しようと考えていた。森の中で発見した大木は、伐ってみると欠陥が多く、その木で造った丸木船が長い航海に耐えられるか疑問もあった。確かに、もう一本伐って、もっとしっかりした船を造ることもできた。しかし、何百年も生きてきた木を伐らせてもらったため、それを無駄にせず使うことが、著者たちにとっては大切なことだった。自分たちで伐った木を責任を持って利用するという、そういった感覚を持てたことが大きかったのである。また、著者たちは自ら「得体の知れない船」と呼ぶ丸太船を、現代では失われつつある技術を集めて造ったのである。そこには、現地の人々にとっても、長年培ってきた技術や知恵を必要とされる喜びがあった。

(400字)

 

問2.この文章からキーワードを2つ選び、その理由を述べなさい。

 この文章のキーワードは「伝統」と「技術」である。「伝統」には、マンダールの人々がもつ独自の信仰、自然観、生命観が含まれる。こういった伝統を、筆者は船を造り、マンダールの人々と共に航海をする過程で知ることになる。マンダールの人々がもつ、海に対する感覚は、海を身近に生きるがゆえに、当たり前過ぎて意識しない、自然に続いてきた生活の一部なのである。こういったことを、筆者は体感し、日本にいたときとは違った考え方をすることができたのである。また、「技術」は、日本の刀鍛冶や野鍛冶が作った道具や、マンダールの人々がもつラヌの帆などの技術を指す。これらはかつては盛んに作られ、用いられていたものだが、今日では失われつつある。現代化による技術の機械化により、必要とされることがなくなってきたのだ。しかし、筆者は、手作りの丸太船で航海することを目標としていた。それゆえに、こういった先人の知恵とも言える技術を必要としていた。もし筆者が航海に出るのがもっと遅かったとしたら、丸太船での航海自体が成り立つことはなかっただろう。

 

問3.下線部a「伝統の技術を知る人たちは高齢化している」という状況は現代の日本にも当てはまる。将来日本にも起こると予想される伝統の衰退から、生活に及ぼすと思われる問題を具体的に述べなさい。

 課題文では、船を造るにあたっての伝統的な技術が失われつつあると述べられているが、現代の日本にもそれは当てはまる。戦後、技術の進歩により発展してきた日本では、担い手の高齢化に伴い、伝統的な技術の衰退の問題がのしかかってくると思われる。例えば、自転車一つをとっても、ハンドルのカーブを精緻な角度で造ることができるのは限られた職人だけだと言われる。また、日本の建造物を造るためのノミやカンナなどの道具を作る人々が高齢化し、そもそもの道具がなくなる状況も考えられる。このように、一見してごく当たり前のようにある道具や建造物は、伝統的な職人の手により造られていることがよくある。彼ら職人が高齢化していくとともに、その技術の後継者不足という問題もある。こうした状況が進めば、これまで身の回りのものを作るための役割を担っていた人々が日本から姿を消すことになってしまう。それは、モノがなくなるとともに日本が培ってきた文化そのものが姿を消すという、生活への影響をもたらしてしまうだろう。

 

問4.下線部b「なぜその儀式や作法が必要なのか、少しだけわかったような気がするんです」と述べているが、その理由を本文中から抜き出しなさい。

 海に対する申し訳なさから無意識にそんな気になる