No.14 東京藝術大学:平成25年小論文模範解答

悲しみや恐怖など、否定的な感情を与える芸術作品が好まれることがあるが、それはなぜか。具体例を挙げて論じなさい。ジャンルは問わない。

 

解答

 私は、悲しみや恐怖といった否定的な感情を与える芸術作品が好まれることがあるのは、その芸術作品に込められた作者の秘めたる思いに接することができるからだと考える。次よりその具体例と理由を述べる。

 

 ムンクの作品に「叫び」と名付けられた絵画がある。私はこの作品を子供の頃に目にし、幼心ながらに少し怖さを感じた。骸骨のようにもディフォルメされた人間の顔のようにも見える人物が何かに懊悩している姿に恐怖を感じたのである。このムンクの「叫び」は名作として名高く、世界でも高い評価を得ている。

 

 このように、見る人に恐怖や悲しみを与える芸術作品が好まれることがあるのはなぜだろうか。それは、それぞれの芸術作品には、その作品の背景としての、作者が発しようとした思いや感情や思想があり、それを大なり小なり見る人が感じているからであると考える。例えば、先のムンクの「叫び」の例でいえば、私の解釈では、人間だれしも悩み、悲しみ、そして結果として叫びたい気持ちにもなる、そういったことをムンクは表現したかったのではないかと考える。

 

 ムンクの作品に限らず、世界には悲しみや恐怖などの否定的な感情を与えているものの高い評価を得ている作品が多数ある。それは、芸術作品を見て直接的に受ける感情は否定的なものであるものの、その内奥にある作者の思想や考えといったものは共感できるものだからであると考える。人は、自分が共感できないものを好むことはあまりない。自分が共感したり、興味深いと思ったりしたものを好むことが多い。そして、世界的に受け入れられ、高い評価を受けている作品というものは、それが否定的な感情を与えるものであっても、その裏には作者の発する普遍的な価値といったものが存在するのだ。

 

 悲しみや恐怖といった否定的な感情を与えるものの、好まれる芸術作品があるのは、その作品が、作者の思いを、見る人に訴えかけることができるからであると私は考える。

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