No.36 日本大学歯学部:平成25年小論文模範解答

 近代歯科医学の黎明期である明治時代,歯科のあり方についての論争がありました。歯科は医学の一分科であり,医師の資格を得たうえで歯科診療を行うべきとする「医歯一元論」と,歯科の特殊性から歯科技術の修得に専念すべきとする「医歯二元論」の2つの見解からの論争です。現在のわが国の制度は,「医歯二元論」に則って,医学部と歯学部とは別になっています。しかし,高齢化社会となった今,糖尿病や心疾患などの全身疾患を持つ方の歯科治療の際,歯科医師が十分な医学的知識を持ち,医師と連携して診療に臨むことが要求されるようになりました。

 歯科医学を単に歯や口腔だけに留めず,全身との関連において系統的に学ぶことの重要性が高まってきていますが,将来の歯科のあり方について,「医歯一元論」と「医歯二元論」の観点から,あなたの考えを述べなさい。(横書き:600字以内)

 

解答

 歯科の在り方に関する「医歯一・二元論」論争を踏まえ、将来歯科はどうあるべきか、私の考えを述べる。

 この論争は、「歯科医療が医療であるか」という問いから発せられる。それには次の二つの背景がある。一つには、歯科医師は、医師の施術可能な口腔外科、口腔内科的な治療行為をすることができ、歯科技工士の業務も可能であるからだ。もう一つには、失われた機能を代わりの物で補填することは歯科医師のみに許されているからだ。これらの理由から、「歯科二元論」が唱えられ、現在に至るのである。

 一方、「歯科一元論」が主張される背景には次のようなものがある。今日、歯を含めた口腔の状態が、人体全体に影響することがわかった。そのため、歯科医師は人体全体に関する医学的知識を深め、医師と連携することが求められてきている。不良な生活習慣は、う蝕や歯周病をもたらす。それらは歯の喪失へつながり、噛む能力の低下、次いで栄養バランスの悪化をもたらす。そうしたことから、生活習慣病と呼ばれる、心疾患や糖尿病、がんといった深刻な状況になるのである。

 歯科医師も医師も、患者が健やかな生活を送ることができるように治療をすることが求められている点では同じである。単に技術的な補填をすることが歯科医師に必要という理由では、歯科が独立することにはならないはずだ。したがって、私は「歯科一元論」にのっとり、歯科医師と医師が緊密に連携をとることが必要だと考える。

(600字)