No.45大阪教育大学2012年度前期日程問題K模範解答

問1

 人は誰しもが、幼年期に「原体験」として、言葉で表現するところの「美しさ」に触れている。「美」というものは、成長するにつれてその幅が広がっていき、生活を彩る軸ともなりうる。誰もが生きていく中でつらさや不安を感じるが、「美」とはそれらを上回る希望を喚起するものだ。

 

問2

 「美」とは、人が生まれながらにして感じ得るものであって、誰もそれを奪うことができないものであると考える。美の実践をするということは、人としての尊厳を保つことに他ならない。なぜなら、人と動物を分かつものは、「美しい」と感じてそれを表現できるかどうかということであるからだ。美という感覚とその表出は、他の動物には見られないものである。それを保つことが人を人としてあらしめることであると言えるだろう。

 歴史的にも、人間の美の実践は現れている。とりわけ、ナチスドイツ独裁下のアウシュビッツ収容所におけるユダヤ人の行動は傑出している。アウシュビッツを経験したユダヤ人の精神科医によれば、圧倒的な絶望の下でも、収容されたユダヤ人たちは希望を失わず、極めて人間的な行動をとったという。いつ自分が死ぬかわからない状況においても、ユダヤ人たちはその人間性を守った。この背景にあるのは、美というものの存在だったのではないかと考える。なぜなら、心の中に希望を持たせる美という存在がなければ、そのような行動はとれないと思われるからだ。希望がなければ、ユダヤ人たちは自暴自棄になってしまっていたことだろう。そして、人間性を保つということは、まさしく人としての尊厳を守ることであり、これこそが美の実践だと言えるだろう。

 このように、美とは人を人たらしめる決定的な要素であり、人間性の礎となるものだ。そして、美を実践するということは、その人間の尊厳を守るということである。美というものがなければ、人は動物と同じであり、絶望することはないかもしれないが希望をもつこともないだろう。今日においても同じことが言えるし、これからも変わることはないだろう。美の実践とは人がよく生きる上で欠かすことのできないものなのである。