No.55 横浜国立大学都市科学部社会共生学科2018年前期小論文模範解答例

今回は横浜国立大学の小論文を解いてみました。人間は、互いへの不信感ゆえに連帯する孤独な存在である、という筆者の議論を要約し、「共生のあり方」について論じるものです。課題文は次のリンクをご参照ください。http://www.cybercollege.jp/ynu/index.php

問1では300字での要約が求められます。「ソ連抑留」や「抑留中のエピソード」といった個別具体的な事例を入れると字数オーバーになります。キーワードは「人間」、「不信感」、「連帯」、「孤独」です。これらがなければ減点の可能性があります。キーワードを含む文を抜き書きしただけでは高得点は望めないでしょう。論理構造を意識して本文を言い換える力が求められます。

問2では600字での論述が要求されます。「世界、社会、文化で想到する〈共生〉のあり方を」とありますから、「世界、社会、文化」の中で自分が論じられるテーマを選びます。「筆者の議論がもつ可能性や限界を考えながら」とありますので、「可能性」と「限界」それぞれについて言及する必要があります。それがなければ大幅に減点される可能性もあるでしょう。さらに、「具体的事例に即して」とありますので、具体例を盛り込まなければなりません。ここは悩みどころですが、今回の答案では「資本主義社会」にしました。一定の具体性をもった答案を意図しています。問題文の指示に従えばすぐに字数は埋まるため、なるべくシャープな文章としなければなりません。

では問題文と解答をどうぞ。

問題 次の、詩人石原吉郎(1915[大正4年]―1977[昭和52年])による論考「ある〈共生〉の経験から」を読んで、後の問いに答えなさい。

<課題文は著作権の関係上省略>

問1.本文の要旨を300字程度で記しなさい。

共生とは二者が相互に利害を共にすることであり、それがなければ生活に困難をきたし、生存が不可能になる場合もある。非人間的な状態に置かれると、人間は、自己を生存させるために、相対するもう一つの生命の存在を受忍しなければならない。自分にとって、他の人間は、自己を脅かす存在として現前する。人間に対するこの不信感こそが、人間を共存させる強い紐帯である。人間が自分に対する脅威であるという認識ゆえに、人間は連帯する。お互いがお互いの生命を揺るがす存在であることを確認した上でこの連帯は成立する。その連帯が孤独の真の姿だ。孤独をはらむ連帯は解体と再生を繰り返すが、一貫しているのは、人間が孤独であるということだ。
(300字)

問2.あなたが今日の世界、社会、文化で想到する〈共生〉のあり方を、筆者の議論がもつ可能性や限界を考えながら、具体的事例に即して600字以内で述べなさい。

今日、資本主義に基づく個人や企業といった経済主体による活動が行われている。経済活動は富を生み出すため、合理的だと考えられている。個人は自己の財産を増やすために労働し、その個人が属する企業体は自社の利益を最大化するために活動する。この営みは合理的であると思われがちだ。ただし、経済主体が各々の自己のために行動をすることは明らかだ。筆者の議論では、人間は原理的に孤独であるから、互いに共生することができる可能性は常に存在する。一方、人間の連帯は互いへの不信感を基礎とするため、よろこばしい連帯は存在しないという限界があるとする。この議論と同様に、自分自身の利益のための選択をすることを誰もが了解している資本主義経済では、経済主体は常に孤独である。経済主体は離合集散し、自分のために相手を利用し、ときには相手と連帯し他の経済主体を利用する。経済社会での共生のあり方はいかなるものなのか。私は、貨幣という、経済主体すべてが共有する価値を軸として共生がなされると考える。資本主義では、貨幣は信用によって担保される。この信用は、人が他者に対してもつ不信感とは次元を異にする。自らが信用する貨幣を、相手も信用するという他者理解が可能だ。貨幣という価値を共有し、孤独とは別の軸が生じる。多元的な軸が存在することは、信ずるに足るものがあるという安堵を経済主体にもたらす。それが資本主義社会における共生の基盤となるのだ。