No.61 順天堂大学医学部2015年度小論文模範解答例と解説

今回も小論文の模範解答例を書いてみました。順天堂大学医学部の問題です。「写真を見て感じたことを書く」という珍しい形式のものです。

今回留意した点は、次の通りです。
①医学部からの出題であるため、自身の倫理観を常識的に示す。
②写真に写っているものを抽象化して考える。
③抽象化したものから演繹して独自性を出す。

それでは、どうぞ。


キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい

順天堂2015

解答例

 写真には黒い外套を着て駅の階段を上る男性と、二つの赤い風船が写っている。私が不思議に思ったことは、駅であるにもかかわらず、この男性ひとりしかいないことだ。駅は人々が往来に使用するものだから、通常は多くの人で混雑しているのではないだろうかという疑念が湧いた。一方、手前には風船が浮かんでいる。風船は一般的に子どもがもっているもので、それだけがぽつんとあるのも奇妙だ。これらから、写真に写っているのは、最終電車が出発した後の、営業が終了した駅ではないかと推測する。そして、風船は誰かが置き忘れたものだろう。ではこの男性は誰なのか。駅としての営業が終了しているのだとすれば、当然この男性は駅員と思われる。駅員が駅の点検をしていると考えることができる。彼は駅員だから、普段の混雑した駅を管理し、駅を利用する人々が心地よく移動できるようにするのがその役目だ。つまり、営業中の賑わいの陰で人知れず名前もわからない多数の人々のために尽くす存在だ。そして、この風船は、駅を利用した子どものものであり、彼らは電車の行き先に胸を躍らせる、希望に満ち溢れた者たちである。彼らは駅員のことを気に掛けることはない。それは駅員が駅において「黒子」の役割を果たしているからだ。

 こうして考えてみると、社会では、多くの人の快適さや安心のために陰ながら尽力する人々が存在することに思いを馳せることができる。駅に限らず、公的な機関や医療機関、その他多種多様な組織に属する人々が、人々の毎日の生活を支えている。彼らは決して表に出ない。あくまで自分の職務を全うし、その結果としてその生業の先にいる人々のために尽くしているからだ。私たちが、写真の赤い風船に象徴される日々の豊かさを享受できているのは、そういった人々の地道な支えがあってこそのものだ。相互に社会の構成員が支え合うことで私たちの暮らしが成立することを、この写真は訴えていると考える。

(800字)