No.70 京都工芸繊維大学2017年度小論文 解説と模範解答例

今回は京都工芸繊維大学からの出題です。

「過去」、「現在」、「未来」、の3つの言葉を、それぞれ、他の言葉で言い換えなさい。そして、なぜその言葉で言い換えたのか、その理由を述べなさい。(600字以上800字以内)
['17京都工芸繊維大学 工芸科学部 設計工学域 デザイン経営工学課程(後期)]

一見簡単そうですが、なかなか難しい問題です。これから《留意点》を書いていきますが、まずは、自分で「どのような解答を書くかな」と考えてみてからご覧いただくと、理解がより深まると思います。ではまず《留意点》です。

《留意点》
①問題文の条件を正確に捉える
②3つの言葉を言い換えた理由は、それぞれに一気通貫するものとする
③読み手にとって理解しやすい配列で論じる

①問題文の条件を正確に捉える

 今回の問題文が求める条件は、まず、「過去」、「現在」、「未来」の3つの言葉を、「それぞれ」、他の言葉で言い換えることです。したがって、これらの言葉を一つずつ、別の言葉で言い換えることが必要です。
 そして、次に「なぜ」その言葉で言い換えたのかという「理由」を問われています。この問題に解答する上で重要なのはこの点だと思われます。3つの言葉を言い換えるのは簡単ですが、その理由をいかに論理的かつ明確に論じられるかが合否を分けるのではないでしょうか。この点は②で述べていきます。

②3つの言葉を言い換えた理由は、それぞれに一気通貫するものとする

 3つの言葉をいかに言い換えても、特に問題はないと思われます。しかし、そう言い換えた「理由」は理路整然としていなくてはなりません。問題文が問うているのはその点にあるからです。そして、「過去」、「現在」、「未来」を言い換えるとして、その理由を論じるには、この3つの言葉を貫く思想が必要でしょう。そうでなければ800字という字数でまとめることはできません。また、小論文としてもまとまりのあるものとはならないでしょう。したがって、これら3つの言葉を言い換えた言葉は一本の串に通されたものである必要があると考えます。

③読み手にとって理解しやすい配列で論じる

 本問では、「過去」、「現在」、「未来」を言い換えることが求められています。これはとりもなおさず時間軸を表わす言葉です。当然、「過去」→「現在」→「未来」につながっていくわけです。そうなると、その流れを意識した答案にすべきでしょう。すなわち、時間軸に沿った論述が求められます。そうしなければ、時間の流れが前後して、読み手が混乱するおそれがあります。小論文は答案を通した採点官との対話です。どんなに素晴らしい内容だと自分が思っていても、相手に伝わらなければ意味がありません。順序だてて述べていくことが肝要です。

解答例にまいります。それでは、どうぞ。

「過去」、「現在」、「未来」、の3つの言葉を、それぞれ、他の言葉で言い換えなさい。そして、なぜその言葉で言い換えたのか、その理由を述べなさい。(600字以上800字以内)

[京都工芸繊維大学 工芸科学部 設計工学域 デザイン経営工学課程(後期)]

解答例

「過去」、「現在」、「未来」を、それぞれ、「あなた」、「私」、「誰か」と言い換える。それは、一人の人間における時間を、一つの直線的なものとして捉えたからだ。人は自分自身を「過去」、「現在」、「未来」といった三つの観点から区切ることができる。


 「過去」を「あなた」と言い換えたのは、「過去」の自分は、相対化され客体化された自分自身だからだ。「過去」の自分については、誰もが「現在」の自分とは幾分異なった存在として客観的に捉えることができる。たとえば、幼い頃の自分や、言うなれば昨日の自分までも、私たちは「現在」の自分とは切り離されたものとして考えることが可能だ。「過去」の自分と「現在」の自分を比較して、成長したとか、何かが変わったとか、そういったことを考えることができる。

 「現在」を「私」と言い換えたのは、自分自身が「自分」足り得るのは、「現在」において自分が「私」という存在であるという実感を持つときであると考えるからだ。もちろん、「私」という存在はいかようにも変化しうる。しかし、今、この場所においてある一定の空間を占めている「自分」は、紛れもなく「私」自身の自我そのものである。そして、その意識を持ち得るのは「現在」という時間に他ならない。したがって、「現在」は「私」と言い換えられる。

 「未来」を「誰か」と言い換えたのは、「未来」の自分は、これからいかようにも変化できる可塑的なものだからだ。今現在の自分がどのような存在であったとしても、「未来」においてあり得る自分は多様である。それは特定することができない存在だ。これからの自分自身の思考と行動、そして周りの環境によってどのような形にでも変化しうる。よって、「未来」の自分は不特定な「誰か」と言える。この「誰か」に期待しながら私たちは「現在」を生きていくのだ。

 このように、「過去」、「現在」、「未来」は自分自身を軸として言い換えられると考える。

(800字)