”読ませる”小論文にするために

今回は、小論文の答案をいかに”読ませる”かという点に関して書いていきます。“読ませる”というのがどういうことかと言うと、小論文の答案として、他の受験生とは違う、採点官もうなるような答案を書くということです。今回は、最低限の形式的な面や論理的な面は抑えた答案を書けるという前提とします。その上で、「いかに小論文の試験でアイデアを出すか」ということに着眼点を置いていきます。

例題がないとわかりにくいと思うので、なるべく汎用性のある問題を例題として選定してみました。

《例題》
天理大学・人間学部・人間関係学科・生涯教育専攻(自己推薦)
つぎの論題について800字程度で論述しなさい。

論題 「現代社会における「読書」の意義について述べよ。」

一見書きやすそうな問題ですよね。しかし、誰にでも書ける問題であるがゆえに、いかに他の受験生と差をつけられるような視点をもてるかが勝負になってくると思います。この《例題》について様々な観点から考察し、”読ませる”答案にしていきます。

まずは、”読ませる”答案にするための技法の一覧を挙げます。

①主題がなかった場合を想定する
②テーマと反対の事例を仮定する
③極端な例を出してみる
④時間軸(縦の軸)を設定して流れを追う
⑤歴史上の出来事から探求する
⑥空間軸(横の軸)に拡張して世界を俯瞰する
⑦論題の現代での例を挙げる
⑧将来的な展望を示す
⑨なぜその問題が出されたかを考察する
⑩キーワードから連想できることをつなげる
⑪様々な人の立場に立つ
⑫すでにあるものを組み合わせる
⑬異なるジャンルのものから共通点を見出す
⑭根本的な部分から見直す

これらひとつひとつに即して、《例題》の【アイデアとアウトライン】を示し、どうすれば”読ませる”ことができるかを考えていきます。

①主題がなかった場合を仮定する

論題は「読書の意義」です。ここから、「もし”読書”がなかったらどうなるだろう?」と考えてみます。これにより、テーマとなっているものの重要性を考えることができます。

【アイデアとアウトライン】
読書がなければ、様々な情報を書物から得ることができなくなる
→それは自分だけでなく、他の人もそうなので、情報が広まらない
→後々の世代に情報を伝えることもできないので発展性がない
⇒情報を拡散し、伝達することに「読書」の意義がある

②テーマと反対の事例を想定する

①では、「もし”読書”がなかったら」を考えました。次は「”読書”をしなかった場合に起こること」を想定します。「すべき行為」の逆を考えることで、これもまた重要性を示すことができます。

【アイデアとアウトライン】
読書をしなければ、すべてのものについて自分一人で考えなければならなくなる
→自分が得られる知識の量にも限りができて、自分の幅が狭くなる
→知識の整理整頓ができず混乱が生じる
⇒知識を整理することで自らの限界を突破し、幅の広い人生観を構築できる

③極端な例を出してみる

次は、「やりすぎた例」を考えてみます。「読書」の場合は「読まなさすぎ」か「読みすぎ」が考えられますが、前者は②で検討したので、後者を考えます。「やりすぎた例」の場合のメリットやデメリットを挙げると、さらに分析しやすくなります。

【アイデアとアウトライン】
読書をしすぎた場合を考えてみる
→読書をしすぎることで何かデメリットがあるだろうか
→読書は知識を得るためのもので、幅広い書物から知識を得ることには基本的にデメリットはない
→さらに、書物は膨大な量があるため、読書をしすぎるということは考えにくい
⇒読書はデメリットがほとんどない営みであるという点に意義がある


④時間軸(縦の軸)を設定して流れを追う

これまでの歴史の流れを「時間軸」と呼ぶことにします(私は「縦の軸」と呼ぶこともあります)。「読書」の歴史的経緯から考える手法です。時間軸から考えることで、歴史を踏まえた深みのある論考ができます。

【アイデアとアウトライン】
「読書」の歴史を考えてみる
→「読書」という行為は文字の発明以来されていることだ
→文字とは記録に他ならないから、「読書」は人間の記録を追うことだ
→人間の記録を追うことで、私たちは人間のこれまでの営みを知り、今後に活かすことができる
⇒人間がどこからきてどこへ行くかを「読書」は明らかにしてくれる

⑤歴史上の出来事から探求する

今度は、直線的に歴史を追うのではなく、歴史上の特定の大きな出来事から考えてみます。少し歴史に関する知識が必要ですが、これにより知識の応用ができることを示せます。

【アイデアとアウトライン】
歴史上の「読書」にまつわる出来事について考える
→グーテンベルクの活版印刷術の発明によって情報が拡散した
→これにより聖書が印刷され、宗教改革にもつながった
→「読書」によって社会が変わる契機だったともいえる
⇒「読書」は先人たちの知恵により生み出されたもので、社会を絶え間なく変革してきたのだ

⑥空間軸(横の軸)に拡張して世界を俯瞰する

「空間軸」とは、現代の社会に視野を広げてみたときの軸のことです。私たちは自分の国だけで物事を考えがちですが、世界に目を向けて考えてみます。これにより、広い視野で物事を考えることができます。

【アイデアとアウトライン】
「読書」について世界に目を向けてみる
→「読書」をするためには文字が読めることが必要だが、識字率が低い国も存在する
→識字率が低いと、間違った情報が伝播したり、そもそも情報量が乏しかったりする
→それが原因で国全体が発展しないことが考えられる
⇒「読書」は国や地域が発展するためにも必要だ

⑦論題の現代での例を挙げる

⑥の派生に近いですが、現代での際立った例を基に考えてみます。この手法により、時事問題を取り入れた答案を作成することができます。

【アイデアとアウトライン】
世界の指導者を「読書」の面から考えてみる
世界のリーダーたちは総じて読書家だ
→読書による教養がリーダーたちの判断を確からしいものにするのだと考えられる
→政治・ビジネスを問わず、読書をすることは必須スキルの一つだ
⇒スケールの大小にかかわらず、読書は私たちの正しい判断を導いてくれる

⑧将来的な展望を示す

これまでは「過去」や「現在」について考えましたが、今度は「将来」について考えていきます。この技法は、将来の展望を示すことで自分が未来志向であることをもアピールすることができます。

【アイデアとアウトライン】
将来「読書」はどうなるだろうか
→将来的にも「読書」は続いていくと考える
→自分の経験値に限界があることは、人間の本質として変わらない
→知を吸収する営みである「読書」の本質も変わらない
⇒人間の本質は変わらないのだから、将来的にも読書は価値を提供し続けるだろう

⑨なぜその問題が出されたかを考察する

問題がなぜ出題されたかを考えるのは、「出題者との対話」でもあります。出題者の問題意識を探ります。これは卑近な例から帰納法的に考えて構いません。出題者の意図を汲み取ることは、小論文においては必須です。そこから解答の糸口が見えてきます。

【アイデアとアウトライン】
近年では「読書」をする人が少なくなっていることが問題になっているのではないか
→現代は多様な媒体が登場し、相対的に「読書」をする人が少なくなっている
→「読書」をする人が少なくなることは、読書自体の衰退を意味する
→しかし、「読書」は知識を得るだけではなく、知識を広めるためにも役に立つものだ
⇒読書を通じた情報の蓄積と拡散は現代においてこそ必要なものだ

⑩キーワードから連想できることをつなげる

今回のキーワードは「読書」ですが、ここから、「書物」、「作者」、「電子書籍」、「知識」、「蓄積と伝達」、「自分のペースで、自分の好きな場所でできる」などといったことを連想できます。これらから、共通点や相違点を考えていきます。

【アイデアとアウトライン】
「読書」からは、「作者」から「媒体としての書物」を通じて「情報を得る」ということを考えることができる
→読書をするには当然書物が必要だ
→書物には必ず作者がいる
→読書とは作者の考えをトレースすることだ
⇒読書をすることによって、私たちは自分では体験しえなかったことや考えもつかなかったことを、作者のおかげで知ることができる

⑪様々な人の立場に立つ

主語は「自分」だけに限りません。子どもや大人、外国から来た人など、多様な主語を考えることができます。様々な人々の立場になって考えると、アイデアも広がってきます。

【アイデアとアウトライン】
「読書」は多様な人ができる営みだ
→老若男女問わずできる、いわば万人に共通の行為だといえる
→言語を介することにより、異文化理解にもつながる
→これらにより、「読書」を通じた理解が可能になる
⇒読書とは、コミュニケーションの道具として極めて有用だ

⑫すでにあるものを組み合わせる

現に存在するものであっても、それを組み合わせることによって、相乗効果が生まれることがあります。それは新鮮な驚きをもたらします。

【アイデアとアウトライン】
「読書」をするために、現代では「紙の書籍」と「電子書籍」がある
→これらを組み合わせて利用することで、効果的に読書ができる
→たとえば、書き込みたいものには紙の書籍、気軽に持ち運びたいものには電子書籍を利用すれば、読書は効果的になるはずだ
→現代においては様々なツールが存在するから、読書もそれに合わせるべきだ
→複合的なツールの使用により、現代でも読書は意義あるものとなる

⑬異なるジャンルのものから共通点を見出す

⑫では関連する部分から考えましたが、今度は全く別のものから考えていきます。全く別のジャンルから共通点を見出すことで、事象の本質を考えることができます。

【アイデアとアウトライン】
「読書」は「スポーツ」と共通点がある
→スポーツには継続的な努力が必要だが、読書においてもそれは同じだ
→また、スポーツに理論が必要なように、読書にも思考のフレームワークが求められる
→さらに、スポーツにも読書にも指導者がいると効果的になる
⇒読書とスポーツに共通点があることからわかるように、読書は複雑なスキルから成り立つものであり、かつそれを養うための大切なツールでもある

⑭根本的な部分から見直す

「そもそも」という観点から物事を根本的に見直す方法です。「そもそもの定義」から物事を考えていくといいでしょう。これにより、洞察をより深くすることができます。

【アイデアとアウトライン】
そもそも「読書」とはなんだろうか
→読書とは、単に「本を読むこと」だけにとどまらない
→本を読んで、そこから知識を吸収することが本質なのではないか
→知識は今後の社会においても必要なものだ
⇒知識を吸収して活用するという、今後の社会において活かせるという点で、読書には意義がある

何かの参考になれば幸いです。