小論文スタート講義

小論文の初歩をまとめました。

 

[1]小論文のスタートライン

 

(1)小論文とは―自分の考えを筋道立てて論じた文章―


 「小論文」は「作文」とは違います。「作文」は「論理性がなくても許される」文章です。一方「小論文」は「自分の考えについて、論理性をもって書かれた」文章です。そして「小論文」は「書くべきことが規定されている」文章です。
 「小論文」を書くときには、与えられた論題に対して論理だった主張をするものと考えてください。

 

(2)論理的な文章とは―誰が読んでも疑問をもたない文章―


 「論理的である」とは、「読んでいる間に疑問符がつかないこと」です。

 【例文】私はリンゴが好きだ。だから他の人もリンゴを食べるべきだ。

 これでは「論理的」とは言えません。「私はリンゴが好きだ」は単なる「主観」です。「だから」は「理由から結論を導く接続詞」ですが、「他の人がリンゴを食べるべき」であるという理由にはなりえません。「なぜ他の人がリンゴを食べないといけないのか?」という疑問符がついてしまいます。
 小論文は、自分だけが読む文章ではありません。必ず「読み手」が存在します。その読み手にとって、疑問を持たずに納得しながら読める文であることが必要です。

 

(3)何を見られているのか―理解力・論理性・表現力・独自性がメイン―


 小論文は、読み手がいることを前提としているので、「評価」の対象です。大学によって、さらにその中の学部によって採点基準は異なると思われますが、採点基準を公表している大学の資料から、次の4点が重要だと言えます。

①理解力:問題(課題文や図表を含む)が言いたいことを理解できているか
②論理性:書いている文章の内容が論理的か
③表現力:文章表現が日本語として間違っていないか、誤字脱字はないか
④独自性:自身の主張が、ありきたりのものではなく、自分なりの観点で考察したものになっているか

各項目の配点などは大学によって変わりますが、この4点を意識しておくとよいでしょう。

 

[2]大学入試としての小論文の特徴

 

(1)読み手―採点官は大学教授― 大学入試の小論文の読み手は「大学教員」だと思われます。 大学教員は概ね次のような方々です。

①その分野の専門家
②仕事は研究と教育
③専門分野について論文を書き続ける
④海外のものも含めた様々な論文を大量に読む
⑤自学の学生(院生含む)のレポートを大量に読む

 プロが書いた論文から、学部生が書いたレポートまでを大量に読んでいるため、ある意味文章のプロともいえます。したがって、大学入試小論文ではいかに彼ら彼女らを納得させるかが重要です。

 

(2)学部特性―どの学部を受けるかで方向性が変わる―


 採点官が大学教員である以上、ある程度は彼ら彼女らの思考の枠組みを意識して書くことも必要です。特に下記の3つの学部は注意してください。

①法学部


 採点官が法曹資格を有することが多いです。司法試験の論文試験を意識した答案にします。司法試験と言っても難しいものではなく、言葉の定義づけを厳密に行うことと、序論部分を簡潔明瞭に書くことを意識するのが第一です。法学や司法試験ではその点が重視されるからです。

②教育学部


 採点官が教員免許を有することが多いため、学習指導要領に目を通すことは有益でしょう。教育とはどのようなものか、小学校・中学校・高校などでどのような指導が求められているかを把握することができます。それを基本知識としてもっておきましょう。

 

③医学部
 採点官は医師免許を有することがほとんどです。医学部で学んでいるため、科学者であるともいえます。したがって、論拠と主張の整合性が客観性をもつか慎重に吟味しましょう。客観性をもつかどうかが重要な場合が考えられます。

 

(3)時間―時間配分が肝―


後述しますが、メモを取る時間を多めにとってください。頭の中だけで考えると、混乱してしまい、時間を食ってしまいます。「メモを取る時間:答案を書く時間=2:3」程度が目安です。誤字脱字をチェックするために、最後に5分は残してください。

 

[3]小論文の構成法

 

(1)構成メモから書く―メモを書くことで考えが膨らむ―


 「構成メモ」とは、小論文を書くにあたっての骨組みとなるメモのことです。基本的に「草稿用紙」などが入試本番で与えられますので、それにメモを書いていくことになります。

 なぜ構成メモを書くかと言うと、メモの取り方次第で、答案の出来不出来が大きく左右されると考えるからです。家などの建物を建てるときにも設計図は必要です。小論文における構成メモは、建物における「設計図」だと考えてください。まず、問題文を分析します。

 私は、小論文においては、精密な解析と正確な読解が不可欠だと考えています。そうでなければ、出題者の意図と反した的外れな答案を書く恐れがあるからです。したがって、まずは問題文の解析と読解のメモをします。

 

例題:「あなたの科学への思いについて述べなさい」

 

 この問題文であれば、

 

「あなたの/科学への/思い/について/述べなさい」

 

 このように、問題文の文節ごとにスラッシュを入れていけばいいです。基本的に「Aについて」とあればAが「書くべきこと」だとわかります。

 

 例に挙げた問題のメモであれば以下のようになります。

①科学への定義への問題提起
②「科学」とは?→数値で表すべきもの(主張)
 ∵定性的な感情だと再現不可だから(理由)
③宇宙や医療の分野でミスは許されない(具体例)
④∴科学は客観的であるべき(結論)

これらを文章に落とし込めば完成です。

 

(2)アイデア発想法―アイデアを出すにも技法がある―


アイデアが出ずに悩むことがあると思いますが、次の点を意識してみてください。

①主題がなかった場合を想定する
②テーマと反対の事例を仮定する
③極端な例を出してみる
④時間軸(縦の軸)を設定して流れを追う
⑤歴史上の出来事から探求する
⑥空間軸(横の軸)に拡張して世界を俯瞰する
⑦論題の現代での例を挙げる
⑧将来的な展望を示す
⑨なぜその問題が出されたかを考察する
⑩キーワードから連想できることをつなげる
⑪様々な人の立場に立つ
⑫すでにあるものを組み合わせる
⑬異なるジャンルのものから共通点を見出す
⑭根本的な部分から見直す

(3)全体の構成―型を意識することから始める―


 「型」に従うかどうかは多くの議論がありますが、まずは「型」に従うのがよいのではないかと思います。その後で自分なりの構成法が見つかればそれを使って構いません。
 「序論・本論・結論」の三部構成とすることを推奨します。
 
 序論で自分なりの「主張」を行い、論文に組み込むべきと考える要素(ワード)を入れながら本論を書いていきます。最初に「主張」を入れるのは、その方が、自分の論の方向性を読み手に伝えやすいからです。
 本論では、序論で書いたことの詳しい説明、補足説明を主に行います。そのボリュームに応じて二つの段落に分けて問題ありません。むしろ、800字や1200字の小論文であれば、本論は分けたほうが見やすいでしょう。ただし、300字など、制限字数が少ない場合はみだりに段落分けをするのは好ましくありません。文章が煩雑になってしまうからです。
 最後に結論ですが、それまでに書いたことを要約して端的に示せばよい場合が多くあります。
    
 小論文の書き方として、「起承転結」という構成をとる人もいますが、今回は推奨しません。そもそも、起承転結とは、4行から成る漢詩(近体詩)の絶句の構成を指すものです。そのため、小説の文章に適する場合はあっても、今回の、「論理的に自分の意見を表明する文章(つまり「小論文」)」には不向きなのです。

 

[4]小論文文章術

 

(1)論証ブロック―主張・理由・根拠のカタマリ―


 基本的に、[主張→理由(→根拠)]の順番で書くのがいいと思います。これを私は「論証ブロック」と呼んでいます。「自分は何がいいたいのか(主張)」を述べたあと、それだけでは納得できないので「なぜならこう思うから(理由)」を書きます。根拠は客観的なデータや具体例が来ることが多いですが、これは必須ではありません。

 

(2)接続詞の使い方―順接・逆接・例示がメイン―


 「論証ブロック」では主張・理由・根拠がメインなので、必然的に次の接続詞をよく使うことになります。

①順接=したがって・ゆえに:条件に対して予想通りの結果が現れることを示す
②逆接=しかし・けれども:条件に対して予期される結果が現れないことを示す
③例示=たとえば:例として示す

まずはこれらの接続詞をうまく使えるよう練習しましょう。

 

(3)具体例の扱い方―一般化できない経験談は避ける―


 「具体例」には「限定的にしか当てはまらない」ものは避けましょう。「部活は制限すべきか」というテーマで「生徒は部活を望んでいる。たとえば私は部活が好きだ」としたら高得点ではないでしょう。このように「自分や自分の観測範囲だけの事例」は説得力がないのでNGです。

 小論文は主張の独自性とその理由付けの論理性、それを明確にする表現力で評価されると思われます。具体例は一連の主張に説得力をもたせるための手段にすぎません。主張を相手に伝える上で、その事例が納得感をもって採点官に受け入れられるかを吟味することが重要です。

 

[5]小論文の問題形式

 

(1)テーマ型―問題文の分析から発想せよ―


 テーマ型とは、短文の問題文しか与えられない形式です。これは前述した「問題文の分析」をすることで対処します

(2)課題文型―キーワードをつかんで筆者の意見を利用せよ―


 課題文型とは、まとまった量の文章を読んで問に答える形式です。
小論文の課題文は、自分にとってなじみのないテーマであることもあります。そのため、問題を解くときに本文から読みはじめると、何について書いてあるかがわからず、時間がかかることもあります。また、課題文を一通り読み終わってから設問に移ると、また課題文を見直すことになって二度手間になってしまいます。ですから、まずは「設問」から読みましょう

 ちなみに、国語の現代文などでは、設問から読むかどうかで意見が分かれるところですが、小論文は国語とは別のものですので、ここでは設問から読むことをおすすめします。

 設問から、「重要な部分」を見抜くには、設問パターンを認識することが重要です。設問パターンには、主に次のようなものが挙げられます。

パターン① 本文にはAについて書かれているが、これについてあなたの考えを述べよ
パターン② 本文にはBとあるが、現実にはCという課題も存在する。これらを踏まえてあなたの考えを述べよ。
パターン③ 本文ではDとEという立場が述べられている。これらの立場を踏まえて、それぞれの主張に言及しつつ、あなたの考えを述べよ。

課題文を読むうえで注目すべきなのは次のパターンです。

パターン① 課題文中でくり返し述べられている単語や文
パターン② 「最も重要なのは…」といった最上級表現や対比した上で肯定されているもの
パターン③ 「…べきだ」「…しなければならない」「…は必要だ」といった筆者の主張を表すもの

「自分の考え」を書くには手順が3つあります。

手順① 筆者が言いたいことを、対比や主張からつかむ
手順② 筆者の言いたいことから、設問に沿って書くべきことをメモする
手順③ メモをして、自分が書けそうなことだけを書く

課題文型小論文の書き方には原則があるわけですが、その「論じ方」にもある程度の方向性があります。そのパターンをご紹介します。

パターン① 課題文に「付け加え」を行う
パターン② 課題文での主張に「反論」を行う
パターン③ 課題文が主張していることに対して「提案」を行う。

(3)図表型―折れ線・棒・円のグラフを的確に把握せよ―
 図表型には大きく分けて3パターンあります。

①折れ線グラフ
②棒グラフ
③円グラフ

①折れ線グラフ
 「推移」に注目してください。「年代」が横軸になっていることが多いため、年代によって変化がないか、その年代には何があったのかを考えましょう。

 

②棒グラフ
 「量」に注目してください。特に「どの項目の量が突出しているか」ということに注意しましょう。また、「1990年と2020年の比較」のように二つ以上の項目を比べることもあるので、項目別、年代別に分けるようにしてください。

 

③円グラフ
 「割合」に注目してください。「どの項目について、何が大きな(もしくは小さな)割合を占めているか」に注意しましょう。「国別の項目をまとめると欧米諸国の割合が多い」といったように、項目をジャンル分けすることも有効です。

 

[6]実際の勉強法

 

(1)知識が土台―参考書と過去問で効率よく知識を吸収する―

 

 小論文の土台は知識です。といっても専門的な知識は必要ありません。高校卒業レベルの国語・数学・理科・社会の知識があれば基本的は解けます。ただし、学部によって傾向があるため、過去問を見てどの分野が頻出なのか見てみましょう。その上で、現在はジャンル別の知識をまとめた参考書が多く出ているので、それを繰り返し読んで基礎知識として蓄えましょう。

 また、本を読むのは非効率的なので、ネットで調べるのも効果的です。ただし、政府や自治体、大学が直接発表しているものだけを参考としてください

 

(2)まず過去問から始めよ―過去問→類題の順で解く―


 過去問を3年分ほど解いてください。その上で、他の大学の似た問題を解きます。類題を探す際に注意すべきなのは次の点です。

①形式面:テーマ型、課題文型、図表型のうち、志望大学と同じ形式か
②内容面:志望校の学部特性や傾向と同様の内容か
③問われ方:志望校と同じような設問か(たとえば「要約」を求められるのか、解答字数は同じくらいかといったこと)

(3)添削を受けるかどうか―添削を受けるのがベター―


 自学では限界があります。客観的な視点を入れることが文書力を向上させる条件ですので、できれば添削してもらいましょう。

 

[7]小論文でよくあるミス


(1)表現―簡潔に書く―


①主部と述部のねじれ
次の「例」のように、主部と述部がねじれると文意がとれません

例 「私が読書が大切だと思うのは、過去の様々な人の考えに触れることができる。」

②一つの文が長すぎる
一文を50字前後だと想定してください。それ以上だと文の意味が破綻する可能性があります。

③字数配分に偏りがある
たとえば課題文の要約と自分の意見論述が求められる場合には、指示がない限りは自分の意見論述を半分以上にするとか、例示だけで大部分が終わらないようにするといったことに気を付けてください。重要なのは「自分の意見」です

 

(2)内容―「自分の考え」を書く―


小論文では「自分の考え」を求められていることに注意してください。次に挙げるものはよくあるマイナスポイントです。

①課題文の内容そのまま
 課題文での筆者の主張をなぞるだけでは高得点は望めないでしょう。筆者の意見について、様々な観点から観察することが重要です。

②熱い思いをさらけ出している
 例えば「私は将来~がしたい」といった、問題とは関係ない自分自身の気持ちに関する記述を脈絡なくするのは、問題に答えていないという点でマイナス要因でしょう。

③論点が発散している
 論点が多すぎたり、あちこちに飛んでいったりしてしまうと、何が言いたいのかわからなくなります。1段落に1テーマが目安です。

 

(3)補足―基礎だが大事なこと―


小論文の基本的なルールは次の通りです。


①書き出し
 書き出しは一字下げ、段落変えの時は必ず改行一字下げを行なってください。改行によって生じた空白のマス目も字数として数えます。
  ※段落変えでないところでは、改行してはいけません。

 

②段落
 一つの段落は最低二文以上で構成します。段落とは、文章(複数の文が集まったもの)を内容によって分けたひとまとまりの部分のことです。よって、段落を構成するには最低二文以上が必要となります。

【言葉の単位】
段落 > 文章 > 文 > 文節 > 単語

 

③一文の長さ
 一文は40~60字程度に収め、長くなり過ぎないようにしてください。長くなると文意が途中で変わってしまう危険性があります。

 

④自分の意見を述べるとき
 小論文で「~と思う」という表現の多用は避けましょう。自信のなさそうな文章になり、読み手に曖昧な印象を与えるからです。自分の主張や意見を述べるときは「~と考える」や「~だ・である」と断定しましょう。

 

⑤文体
 文体は常体(「だ・である」調)を使います。敬体(「です・ます」調)を使用してはいけません。また、書き言葉(=文語体)を使ってください。話し言葉(=口語体)を使ってはいけません。

 

⑥カタカナ語
 カタカナ語は、外来語の日本語表現がない場合に用いるのが基本です。適切な日本語表現がある場合にカタカナ語を用いることは、文章の質を低めることになるので、原則的に避けてください。
ただし、問題文の中に使用されている表記であれば、そのまま使用して構いません。その場合、表記を統一させましょう。